浩太郎君
これは以前飼っていた猫の話です。
その子は今から20年程前、バイト仲間で行った海水浴の時に
海で拾ってきました。
凄く人懐っこい子で、誰にでも愛想を振りまいていて、自分にも擦り寄って来ていました。
多分、生後2か月位・・。まだ手の平サイズでした。
もう可愛くて、放っておけなくて、海水浴そっちのけで自分だけ猫と一緒に
家に帰りました。
当時、実家住まいだったのですが、猫は飼ってはいたものの、もう飼わないという
雰囲気になっていて・・、子猫を連れて帰ると、凄く怒られました。
でも、自分がバイト代(当時学生でした)で世話するから金銭的な迷惑は掛けない
し、餌やりやトイレの掃除もすべてやる、という条件で飼っていい事になりました。
猫の名前は、今まで○○太郎と名付けていたので、
今回は浩太郎と名付けました。今考えてみたらサバトラでしたねその子は。
それからしばらく、自分の部屋で飼う事になります。
朝餌をあげて、昼だけ親にお願いして、バイトから帰って来たらまたご飯をあげて・・。
ホントに手塩にかけて育てました。・・と言っても子猫の間は殆ど寝ていたので
全く手が掛かりませんでしたけどねw
でも、人懐っこいので、ある日帰るとすっかり両親にも懐いていて、
母に抱かれていました。
こうなったらこっちのもので、餌は自分が不在の間は母があげてくれました。
1歳を超えて来ると、外に興味を持った様で、うちは車の通りも一日通しても
ほぼ無い様な所というのも有って、外に出すようになりました。
夜中、部屋の網戸に外からよじ登って「帰って来たぞー!!」って鳴いて
良く起こされましたw
自分が就職して、忙しくて、夜中の12時位に帰ってきても、鈴を鳴らしながら迎えに来
てくれて家まで走って競争したりもしましたw
外に出はじめてからは良く他の野良猫と喧嘩もしていて、大けがして帰って来る事もありました。
・・でも8年目を迎えたある日・・。
浩太郎君の様子が変でした・・。よだれを垂れていて、ぐったりした様子・・。
動物病院に連れて行くと、猫エイズと診断されました。
その頃猫の知識が無かった自分は去勢する意味が解っておらず、
浩太郎君に去勢手術をさせていませんでした。
その結果、手遅れになってしまったんです・・。
猫エイズになってしまったら、もう後はなるべく苦しまない様に
決まった期間で注射を打ったり、白血病が併発している為、尿道結石に
なりやすく、決まった餌しか食べさせることが出来ません・・。
猫エイズと診断されてから、何回動物病院に浩太郎君を注射を打ちに連れて行ったり、
餌だけ買いに行ったりしたか解りません・・。
餌なんか、高くて、5kgで一袋5000円位しましたし・・。でも直ぐなくなってました。食欲だけは有ったんですよね・・。
浩太郎君が日に日に弱っていって、でも注射打たなくちゃいけなくて・・。
動物病院の先生に「なんでこんなに苦しまないといけないんですか!治せないんですか!!」って本気でブチ切れた時も有りました。
でも、先生も察してくれて、頷くだけでした。
最後の日・・。浩太郎君は玄関の土間でぐったりしていて、
もう動けませんでした。
ここ数日餌も食べれなくなっていたんです・・。流動食も受け付けませんでした。
昼過ぎ、自分は急に眠気に誘われて、起きたくても起きれませんでした。
浩太郎君は、動けない筈の体で、最後の力を振り絞って
土間の段を飛び越え、座敷の両親の目の前でニャーと鳴いてそのまま
息絶えて死んだそうです・・。
きっと自分には死ぬ姿を見て欲しく無くて、不思議な力が働いたのかもしれません。
両親は自分が寝ている間に浩太郎君を庭に埋めました。
自分は余りのショックで仕事が手に付かず、社内でのいざこざも有って
転職をして県外に出ました。
それから10年以上経って、実家に戻ってきて
突如景虎君が現れます。自分は多分、浩太郎君が神様にお願いして、
記憶は消されて、姿も違う猫になったけれども、
またこの家で猫として生きる事を選択してくれたんじゃないかな?と思います。
・・まあ勝手な妄想ですけどねw